確定申告の無料相談をここ数年やっておりますが、毎回思うことが有りました。それは外国に親族がいる方の扶養控除が多い事です。
扶養控除はざっくりと書くと①16歳以上の親族を②金銭的に援助し③その親族の給与収入が103万円以下である場合に控除が受けられるものです。
これは必ずしも同居している必要はなく、例えば遠方に住んでいる大学生に仕送りを送っていたり、田舎の両親に資金面で援助していれば、扶養になるケースも有ります。実際に親族が存在しているか、収入が103万円ないかどうか、と言うのは日本国内の親族であれば税務署が各市区町村に問い合わせることで確認できてしまうため、虚偽の申告は難しい状態にあります。これからはマイナンバー制度も始まり、更に厳格化されるものと思います。
一方で外国に住む親族については、かなりルーズになっています。実際私も確定申告の無料相談等で対応していると、外国の方から「故郷の両親や兄弟を扶養しています。」といって扶養を受けたいという相談が何件かありました。仕送りしている事実は有りますか?通帳見せてください、というお話をすると去年はそんなことしなくてもやってくれた、と言われたりもします。実際のところそれらの証明については提示が義務化されておらず、2~3人の扶養であればそれで進めてしまっていたりもしました。こういった方法が外国人コミュニティ間で広まっているようで、税の公平の観点から以前より問題視されていました。
そこで会計検査院が実態を調査した結果、7割の人が所得を0にしており、驚くことに最大で40人もの扶養親族がいるとして申告しているケースもあったようで、改善が求められました(参照:海外に多数の扶養親族、7割が所得税ゼロ 会計検査院)。そこで税務署は28年1月から①戸籍や外国の政府が発行した書類(氏名・生年月日・住所の記載があるもの)と②親族に振込をした事がわかる金融機関の書類等の提示を義務化しました(参照:源泉所得税の改正のあらまし)。
これにより虚偽の申告は少しは減るものと思われますが、実際に親族に仕送りをしていた方もいらっしゃると思います。政府が発行した書類を揃えるのは容易ではなく、確定申告の相談会の現場などで混乱が予想されますが、確定申告だけでなく年末調整でも同様の書類提示が求められますので、一般企業でも年末調整の時期に同様の事が起こるかと思います。従業員の中で外国の親族を扶養しているケースがある場合、あらかじめ上記の改正内容を伝えて頂き、準備をしてもらったほうが良いですね。