先日、税理士向けの営業セミナーに参加して来ました。
全部で3部あり、第1部はWEBマーケティング、第2部は金融機関の借入交渉、第3部は開業税理士向け、と言った内容でした。
Webマーケティングはご本人がWEBを活用して実際に売上を上げているのが良く分かり、実例を交えながら何故そういうやり方にしたのかを具体的に説明し、第2部は元銀行マンが借入の審査の現場を明かしながら交渉手法を説明してくれて、とても為になるものでした。
問題は第3部のセミナーなのです。50過ぎの税理士が開業税理士向けという漠然としたテーマで話をしたんですが、酷い内容で聞いていてイライラしてくる程でした。お年寄の先生にありがちな自慢話を何度も繰り返し、しかもそれが明らかな法螺話なのです。
「お客さんは毎年に100件~200件と増えて今は何千件もあります。しかも解約は年に1件あるかないか。うちのやり方でやれば調査なんて年に2~3件程度しかありません。従業員も毎年4~5人採用してみんな幸せに働いていて辞める人なんていません!(中略)従業員数は今18名です。」
あれ??開業して30年以上経っているのに人数おかしくないですか?その顧客数をその人数で回せるんですか?と思いつつもまぁ自慢したくてしょうがないだろうと聞き流していたんですが、この後にこの税理士さんの売上の増やし方を伝授して頂きました。
「他の税理士からうちに乗り換えた場合、最初の年に前の税理士のやり方で作った申告書とうちの申告書の2つを作ります。そしてどれだけ節税できたかをお伝えします。うちのやり方なら100万~200万くらいはすぐに節税できます。そしてその節税額の半分を請求したらみんな喜んで払ってくれるんです。だから解約なんて無いんです。」
この税理士さんのお客は大半が不動産所得の個人とのことでした。個人の不動産所得で200万~400万の所得を減らすのは難しいので、消費税の節税かな、と思いつつ聞いてみたところ次のような話でした。
「1つは小規模企業共済に加入してもらいます。2つ目は青色申告控除で65万を控除します。3つ目は減価償却の耐用年数を減らしたり定率法をに変えます。これをやればすぐに100万は節税できます。お客さんは節税できてうちは売上上がってどっちも幸せです!」
え・・・それをやってお金もらうんですか?と正直驚きました。小規模企業共済は公的制度であり節税の効果はありますがこれで報酬をもらうようなものでは無いと思います。年金基金や付加年金を勧めてその節税額から上前をはねるようなものです。
青色申告控除については記帳することを条件に控除ができるものなので、記帳代行の報酬の代わりということであればこれはありでしょう。別途報酬を貰っていたなら論外ですが。
最後の減価償却の変更については節税とは言わないものです。減価償却費を増やすことで確かにその年の所得は減りますが、その分将来に償却できる金額が目減りすることになります。要は将来の経費を先取りしているだけであり、税金が減った分将来の税金が増えることになるのです。ましてや累進課税であるためトータルの税金はむしろ増える可能性すらあります。それに対して節税できた年だけそこから報酬を取るというのは、相手に知識がないことを利用して搾取しているといっても過言ではないでしょう。
そもそも節税というのは税理士にとっては当然の仕事であり、複雑なスキームを使ったものはともかく、この程度の節税案で別途報酬をもらうようなものでは無いと思っています。当事務所は目先の利益にとらわれず本来やるべき事を行っていきたいと考えております。